青野ノリフミの「戻りました」

エッセイ・随筆。休憩から戻ったときに思い出したり、人に話したりするような、気軽に読めるものを書いています。

踏切にある便利なAI

森や山、田んぼに古い民家がある景色。

わざと遠回りをすることがあります。国道などの通常の道では飽きてしまい、ふだんと違う景色をどうしても見たいときがあるのです。

そういうときに気をつけるものがあります。踏切です。

 

先日も踏切を通りました。

私は左右の確認をしっかりしているのですが、踏切の向こう側で止まっている車の運転手の顔が、チラチラと目に入ります。50代か60代、ダルそうにこちらを見続けています。どうやら、確認を全くしていない。

 

彼女にとって私は、何なのでしょうか。

「一時停止してください。左右の確認、確認しました。音の確認、確認しました。発進してください。」ちょうどいいところに現れた便利なAIですか。

 

もしかしたら彼女は普通に生きるのに、飽きた人なのかもしれません。

彼女にとっては、特別ではない踏切のある景色を、私に委ねることによって特別にしたのです。

そんな景色もあるのかもしれない。