青野ノリフミの「戻りました」

エッセイ・随筆。休憩から戻ったときに思い出したり、人に話したりするような、気軽に読めるものを書いています。

ショッピングモールのブースに聞こえる拍手と昭和

先日ショッピングモールに行ったときのこと。フードコート近くのブースに、健康器具の会社が期間限定で入っていました。私のいるフードコートまで、拍手や元気な声が聞こえてきます。

1回15分くらいだと思うのですが、機械を無料で体験できるようです。私も体験しようかと思いましたが、恥ずかしいので辞めておきました。

1日の新規客の目標があるらしく、段ボールの立札に「あと◯人」と書かれています。目標を達成したら期間延長ということでインストラクターの人だけじゃなく、お客さんもフードコートにいる知り合いを捕まえに来たりと積極的に協力していました。

インストラクターの人も近くを通るお客さんには大きな声で挨拶をします。利用したことがある人には、遠くからでも声をかけ大きく手を振ります。お客さんが帰るときには、ボディタッチを心がけ、インストラクターの人に抱きつくほど懐いている子供もいました。

機械を体験している間もどれだけ効果があるのか、ホワイトボードを使い大きな声で説明しています。お客さんにも発表させていましたが、まんざらでもない様子。インストラクターの人は背が3センチ伸び、体重も減って、声も良くなったそうです。お客さんの中にはツルツルだった頭に、産毛が生えてきたという話も。

ずっと聞いているとお客さんが常連になるであろうテクニックが、たくさん詰まっていました。

一丸になって目標を達成させる。みんなの前での発表も承認欲求を満たすと同時に、聞いてる人は身近な成功談として効果を証明できます。

毎日利用させることでも「あれをしないと調子悪いな」と思ってくるのでしょう。

しかし、それだけで説明できないような輝いた顔をしています。

今の時代に合わないんですよ。
ボディタッチも。人前でも大きく手を振る光景も。知らない人同士が一丸となって目標を達成する様子も。

まるでドラマで見る昔の日本のようでした。

そうか、彼ら彼女らの中では、昭和に戻っているのです。