青野ノリフミの「戻りました」

エッセイ・随筆。休憩から戻ったときに思い出したり、人に話したりするような、気軽に読めるものを書いています。

星を伝える道化師

星の逸話が、たくさん載っている本を持っています。星座占いがメジャーなので、自分の星座くらいはみんな知っていると思います。それなのに、星座の話に詳しい人と出会ったことがなかったので、持っていたら話のネタにできると思ったのです。そしてロマンもあって知的に見えて、格好いいじゃないですか。衝動的に買ってしまいました。

当時働いていた職場では、100人以上の人がいる部署に所属していました。10人くらいには星座の話をしたと思います。その中に、カニ座の人が何人かいました。カニ座のエピソードは、勇者や怪物が出てくるバトルものです。そして友情もあり、カニは踏み潰されます。一番好きなやつです。10秒から20秒くらいの話でしょうか、相手が1人のときを狙ってそれぞれに話をしてみました。どうすれば面白く伝えることができるのか、強調する登場人物を変えたりしながら、動きを交えて話したのです。

何度試しても思っていたのと違いましたね。何が違うかというと、知的なロマンのある話じゃなくて、面白い小話にしかなりませんでしたね。話は話し手で決まるのでしょう。

それでも星にロマンを感じずにはいられません。学生の頃に見たアニメで、プラネタリウムが舞台の回がありました。内容は忘れましたが、デートに使われる場所でもあるということだけは覚えていて、いつか誰かと行ってみたいと思っていたのです。

その夢は、カニ座の1人にお願いして達成できました。このプラネタリウムには「あのとき見た星座だね」と、そういうやり取りをいつかしたいという願いを込めていましたがが叶いませんでした。

後日ラーメン屋さんに誘ったときのことです。このラーメン屋さんは、味もトップクラスで清潔感があり、おしゃれな創作ラーメンもやっていて女性を誘うにはうってつけ。私のとっておきのカードです。

ですが、そのラーメン屋さんに向かう途中で、彼氏ができたと打ち明けられました。裏切られたとか、そういう気持ちは一切ありませんでした。幸せになってほしいとさえ思ったくらいです。

ただ、どう接すればいいか分からなかったのです。ラーメンを食べているときもよく覚えていません。ラーメンに浮かぶナルトのように、私の頭の上で星がぐるぐると回ります。

あの踏み潰さたカニは私だったのでしょうか。